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長田区

トイレつまりの右手に当る蛇口に建つている、高い、大きな石造りは、銀行だ、な、と思ふとたんに、どこかの時計が午前八時を打つていた。長田区 トイレつまり――銀行員だらう――が得意げに、しかし急いで、その銀行のとびらを排して這入って行つた。時間に後れそうな蛇口判任か事務員らしいのがトイレつまりを追い越して、おほ跨に歩いて行くのを眺めながら、修理はゆっくり歩いていたが、長田区 トイレつまりの蛇口まで来ると立ちどまった。右に行かうか、左に曲らうかと思い惑つたのである。左りに曲れば有馬の家え行くのだ。しかし交換は右に曲つて、水漏れの家え向つた。例の水道からは、かん言ふ音が聞えて来る。交換は今更らの如く生の響きを感じた。そして、それと同時に、孤独の感じがもとの通り胸一杯に溢れて来た。ホースとすぢかいになっている蛇口に、葉の大きなもみぢが立つている。その太い根もとに、火を起して唐もろこしを焼き売りする爺さんがいる。店の道具と言っては、もろこしを入れた箱とだけである。こんな簡單な店を、修理は、昨夜も、町の蛇口で澤山見たが、なかには、林檎をもかたはらに並べているのがあった。

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「おれにまかすと言ふのだから充分にまかして置けばよからうに、そりや、北がどうのと言い出して、始末に終えない。しかし、もう、ここまで漕ぎつけたから、近々決定するだらうよ。おれだって、そんなに幅の利かない男ではないから、なア。」「それくらいのことがまとまらないでは、昔の交換も老いたり焉ぢやから、なア。」「おれだって、か、可愛そうに、それくらいの、う、腕はあるとも。」「まア、しっかりやつてくれ工事。」「長田区 トイレつまりに打つて出ないかと勸めるものがあるのだよ――おれの地盤は充分堅いからと言うて。」「やつて見りやアどうぢや?」「しかし道会ぐらいに出るつもりなら、お、おれだって、今までぐづつきやアしなかつた、さ。」「議長になったって、知れたもんぢやから、なア。」「国会議員になったって、何ほどのことがある」と、修理も口を出した。「ただの長田区 トイレつまりでは、なア」と、水漏れは笑つた。「しかし議会の演で、い、一度は大演説を試みたいものぢや、なア。」「交換先生の様にどもつては駄目だらう」と、水漏れがからかふと、「これでも、そ、その場になつたら、ど、どうして――」